キリムの世界
キリムとは
キリムとは、一般にパイルを持たない平織りの織物を指します。結び目によって毛足を立ち上げる絨毯とは異なり、経糸と緯糸の交差によって面をつくるため、表裏の印象が比較的近く、軽やかで構造が見えやすいことが特徴です。
しかしキリムは、単に「毛足のないラグ」というだけではありません。そこには生活の道具としての役割、地域ごとの技法、そして長い時間をかけて育まれた文様の文化があり、その世界はきわめて豊かです。
平織りとしてのキリム
キリムは、経糸に対して緯糸を通しながら文様を形成していく平織りの織物です。パイルラグのような結び目と毛足がないため、表面はより平らで、文様は色面の組み合わせとしてはっきり現れます。薄くしなやかなものから、しっかりとした厚みを感じるものまで幅がありますが、全体としては扱いやすく、日常の中で使われてきた実用品です。
また、キリムは「織りの構造」がそのまま見えるため、技法の違いが仕上がりに大きく反映されます。スリットのある織り、緯糸を絡ませる織り、補助糸によって表情を加える技法など、地域と用途によって多様な方法が発展してきました。
遊牧・部族のキリム
遊牧民や半遊牧民にとって、キリムは住まいと移動の生活を支える重要な道具でした。床に敷くものだけでなく、袋物、塩袋、家財を包む布、祈りのための小さな敷物、寝具や覆い、さらには赤子の揺りかごを整えるための布としても使われました。
限られた持ち物で暮らす生活の中では、軽く、たたみやすく、丈夫で、しかも美しいことが求められます。遊牧のキリムには、その合理性と強い造形感覚が共存しており、小さなサイズの中にも驚くほど濃密な文化が織り込まれています。
村のキリム
定住した村落で織られるキリムは、遊牧のものに比べて大きなサイズが多く、家の床や壁、座の空間を整えるための用途に合わせて発達してきました。地域ごとに織り幅、色の好み、ボーダーの構成、中心文様の置き方が異なり、それぞれに土地の個性が現れます。
同じアナトリアの中でも、中央部、東部、西部では印象がかなり変わります。村のキリムには、日常の道具としての実用性だけでなく、持参金や家族の記憶を残す織物としての意味もありました。そのため、丈夫さと同時に、家庭や地域の美意識が強く表れます。
古いキリム、アンティーク、新作、モダン
キリムを語るときには、古いもの、アンティーク、新しいもの、そしてモダンデザインを区別して考える必要があります。一般に古いキリムとは、良質な素材と地域性を持ちつつ、必ずしも美術品として扱われるほど古くはないものを含みます。アンティークは、より長い時間を経て希少性と歴史性が強く認められる作品に使われることが多い言葉です。
一方で、新しいキリムやモダンキリムが価値を持たないわけではありません。重要なのは、素材、織り、色、構成にどれだけ必然性があるかという点です。古い作品から学びながら、現代の空間にふさわしい新しいキリムを生み出すことも、キリム文化を生かし続けるための大切な仕事だと私たちは考えています。