キリムの世界

コレクション

私たちにとってキリムのコレクションは、単なる蒐集ではありません。古いキリムやラグを実際に見て、触れ、修復し、その構造と色、糸、文様の論理を読み解くことが、ものづくりの基礎になっています。

一枚ごとに異なる地域の記憶、生活の痕跡、そして織り手の判断が残されており、私たちはそこから多くを学んできました。過去の優れた作品を深く理解することが、現在のキリムを見る目と、未来へつなぐ仕事の両方を育ててくれると考えています。

OUR KILIM WORLD

古いキリムから学ぶこと

私たちは昔から、古いキリムやラグのコレクションを通して、素材、構成、色の重なり、そして地域ごとの織りの個性を学んできました。教科書だけでは見えてこないことも、実物の中には数多く残されています。

どの糸がどのように撚られているか、どの部分に補強があるか、文様がどのように反復され、どこで意図的に崩されているか。そうした細部を読み取ることによって、キリムが単なる装飾品ではなく、生活と技術の結晶であることがはっきり見えてきます。

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父が始めた蒐集

私たちのキリムの歩みは、父がこの仕事を始めた頃の蒐集から始まりました。市場で見かける一般的な品だけでなく、希少で保存状態の良い古い作品、あるいは地域性が強く残る珍しい断片にも強い関心を持ち、少しずつコレクションを築いていきました。

そうして集められた作品群は、商売のための在庫ではなく、見る力を育てるための基準でした。良い作品を見続けることによって、色の質、糸の質、織りの密度、そして本当に価値のあるキリムとは何かを判断する目が養われていったのです。

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コーカサスとトルクメンへの広がり

ソビエト時代の閉鎖が終わった後、私たちはアナトリアだけでなく、コーカサスやトルクメン系のキリム、袋物、織物にも目を向けるようになりました。そのことで、同じ平織りの世界の中にも、地域ごとにまったく異なる秩序と感覚があることをより深く理解できるようになりました。

コーカサスの明快な幾何学、トルクメンの反復と緊張感、アナトリアの力強く柔らかな構成。それぞれを比べることで、キリム文化を一つの国や一つの民族だけで捉えることの難しさと面白さが見えてきます。私たちのコレクションは、そうした広がりを持ちながら形づくられてきました。

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2024年の本『キリムに世界』

長年にわたって見てきた作品や考えてきたことを、私は2024年に『キリムに世界』という本としてまとめました。それは単なる図録ではなく、キリムを通じて見えてくる地域文化、暮らし、技術、そして美意識を整理し直すための試みでもありました。

一枚のキリムの中には、織り手の手の動きだけではなく、土地、家族、移動、祈り、贈り物、修理といった多くの時間が重なっています。本を書く作業によって、私たちが日々コレクションから学んできたことを、より言葉として伝えられるようになったと感じています。

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修復の現場で得た知識

イスタンブールの店には、昔から優れた修復職人が多くいました。私たちは自分たちのキリムだけでなく、他のコレクターが所有する作品の修復も数多く手がけ、その過程で非常に多くのことを学びました。

補修の跡を見れば、どの部分に負荷がかかりやすいかが分かります。解れ方を見れば、糸や構造の特徴が見えてきます。修復は単に古いものを直す作業ではなく、作品そのものを解剖するように理解するための重要な入口でした。私たちのコレクションへの視点は、この修復の経験によってさらに深まりました。