北西ペルシア絨毯の系譜
ビジャール
Bidjar は、北西ペルシアを代表するクルド系ラグの産地です。標高の高い町と周囲の村々で織られるこのラグは、強靭な構造と簡潔で力強い意匠によって、ペルシア絨毯の中でも特に耐久性に優れた存在として知られています。
ジャン=レオン・ジェロームによる《絨毯商》歴史
Bidjar は、ペルシア北西部に位置するクルド人の町で、市街地の周囲には約40の村が広がっています。標高約1,940メートルという高地にあることから、「イランの屋根」とも呼ばれてきました。15世紀には Shah Ismail の所有する村として記録に現れ、19世紀には町としての姿を整えますが、第一次世界大戦中には占領と飢饉によって大きな打撃を受け、人口も半減しました。
それでもこの地域は、町と周辺村落をひとつの織物圏として保ち、丈夫で実用的なラグの産地として高い評価を築いていきます。Bidjar の名が今日まで特別な響きを持つのは、その過酷な環境の中でも揺るがない織りの伝統が守られてきたからです。
ビジャール絨毯の文様文様
Bidjar の意匠は、種類こそ多くありませんが、簡潔で明快な力を持っています。構成は概して直線的で、都会的な曲線の洗練よりも、堅実で実直な美しさが前面に出ます。かつてはデザインが村ごとに結びつき、特定の文様が特定の村で織られるという伝統がありました。その後、Wagireh と呼ばれるサンプル・システムや方眼紙の導入によって意匠の共有は進みましたが、それでも Bidjar のデザインは大きく広がりすぎることなく、限られた語彙の中で個性を保ってきました。
少数の構成を深く磨き込むこと。それが Bidjar の文様世界の特徴です。
写真:ビジャール絨毯の織り、2020年 アディヤマン織りと制作
Bidjar のラグは、何よりもその圧倒的な耐久性で知られています。いわゆる「ウェット織り」と呼ばれる技法では、緯糸を湿らせながら強く打ち込み、非常に密で硬い組織をつくります。縦型の織機に向かうのは主に周辺村落のクルド人女性たちで、一本一本の結びを重く締めることで、他の産地にはない堅牢さが生まれます。
この構造ゆえに、Bidjar のラグは重く、硬く、長年の使用にも耐える作品となります。実用品としての信頼性と、絨毯としての風格が、ここではひとつに結びついています。